「しゃばけ」「ぬしさまへ」に続く、軽妙な時代ファンタジーの三作目。第一作の「しゃばけ」は第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。「しゃばけ」は長編だが、二作目、三作目は連作になっている。
回船問屋長崎屋の若旦那一太郎は幼い頃から病弱で、大甘の手代、佐助と仁吉におかいこぐるみで守られているが、彼は妖(あやかし)を見ることが出来、身の回りに屏風のぞきやら鳴家(やなり)やらが戯れている。。
一太郎が怪異な現象に出くわしたり、殺人事件を妖の力を借りて解決したりするこのシリーズだが、一作目の「しゃばけ」は、面白いものの深みが足りないような印象を受けた。
それが「ぬしさまへ」になって、妖との関わりや哀切感がグッと深まったように思う。その好調を維持して「ねこのばば」も読ませた。迷子の娘を保護して家に帰すと、複雑な事情が明らかになる「花かんざし」、隣家の幼なじみお春ちゃんとの思い出を描いた「たまやたまや」などがしみじみと切ない。全体の流れはユーモラスなのだが・・・。
NHK−FMで22:45から15分間、青春アドベンチャーというラジオドラマの枠があり、過去に二回このシリーズがラジオドラマ化された。可愛らしい小鬼の群である鳴家(やなり)のファンだが、このドラマでは子供の声をデジタル処理で重ねており、効果的で面白かった。