本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ラッキー・マン/マイケル・J・フォックス

人気俳優だったマイケル・J・フォックスの、若年性パーキンソンを発病してからの闘病と幼年期からの来し方を綴った自伝ノンフィクション。堅実な両親に育てられたいたずらっ子の微笑ましいエピソード、俳優として成功していく様子や、テレビ・映画作品の内側などが詳細に興味深く語られており、自省や分析を交えた知性的な文章が読ませた。本書においては両親や妻、子供との家族愛も重要なテーマだと思う。

パーキンソンの初期症状が現れてからは惑乱し、アルコールに逃亡するが、徐々に立ち直り、病を受け入れ、俳優生活を断念してカミングアウトに至る、この過程がなかなかスリリングだ。

病を得たからこそ豊かな人生を送ることが出来る、だから自分は「ラッキー・マン」なのだそうだが、重い病気を持つ患者からは反論があるだろうと言うことは自身が書いている。ここまでの覚悟はなかなか持てないだろうなぁと思った。

現在は患者団体の広告塔として国への働きかけをしたり、財団を設立して研究機関への資金援助をしたりしているようで、ただ有名なだけでなく、有能でもあることが見て取れる。有能だからこそ喜劇役者として成功できただろう。
文筆家としても十分にやっていける人だと思えた。