本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ファイナル・カントリー/ジェイムズ・クラムリー

詩情豊かなハードボイルド、酔いどれ探偵ミロシリーズの4作目。

故郷のモンタナを離れ、前作で恋人となった女性との縁でテキサスでモテルと酒場を始めたミロだが、そろそろ退屈してきており、探偵仕事を再開している。妹をレイプし殺した犯人をおびき出すのでサポートしてほしいという依頼で現場に乗り込んだミロは、暴漢との乱闘に巻き込まれ・・・。

踏まれ蹴られボロボロになりながら真相を明らかにしなければ気が済まないミロは、根っからの探偵なのだろう。ただ、事情が複雑にからまっているので、主要な部分をもう一度読み返して、やっと納得したが、この小説に限らず、伏線が張ってある物というのは、読み返してやっと理解できることが多々あるので面倒だ(笑)。

ハードボイルドには魅力的な悪女がよく登場するが、本作でも同様で、彼女への思慕が美しい重層低音になっているように思う。彼女の他に三人の女性と関係を持ち、コカインを吸いまくり、さまざまな(法律的には)悪事に手を染めるミロはとんだ不良親爺だが(本作中で60才の誕生日を迎えます。タフなオッサンですな(笑))、独自の倫理感を持っていて、それに抵触しない限り問題ないのだろう。

「酔いどれのほこり」「ダンシング・ベア」「明日なき二人」に続く4作目だが、アクションの比重が重くなっており、その分初期に較べて抒情性薄れたような印象はある。物語としては十分に面白いのだが。

余談ですが。
「チョイ不良(わる)オヤジ」を売り物にしている雑誌がありますが、ミロの足許にも寄れないでしょうなぁ・・・。