本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

呉漢/宮城谷昌光

各地に群雄割拠する中、勢力範囲で善政を布く劉秀に臣従し、武将として後漢王朝の成立に寄与した呉漢の生涯を描く中国史小説。


器量の大きな主人公が、信頼できる仲間や部下を見出して波瀾万丈の活躍をし、出世したり大業を為したりという、いつもの宮城谷作品のパターンであるが、冒頭あたりでの呉漢は、土に向き合っているだけの暗くて視野の狭い農民であり、その辺がいつもとは違うパターンかもしれない。しかし、その愚直な篤実さが後になって生きてくる感じでもある。


ひとの特性や心理や行動哲学などを独特の美文で語る名調子はいつもながら読んでいて心地良い。