本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

孔丘/宮城谷昌光

儒教の祖である孔子の評伝小説。


宮城谷作品と言えば、高潔で剛胆で知謀の好漢が信頼できる仲間や部下を得て大望を果たすというパターンで、どれも似たり寄ったりと言えば言えるのだが、独特の美文で語られるのが気持ち良く、つい何冊も読んでしまっている。


宮城谷作品のパターンとして、概ねは武将であったり、やがて王になる偉人だったりするのだが、本書の主人公は礼を究めようとしている思想家であり、信頼できる臣下は弟子ということになる。そのやり取りは哲学的であったり倫理的であったりして、そのリズムが心地よい。


ただ、礼を説く孔丘はやや俗っぽさを併せ持ち、己の思想に自信がありながらなかなか受け容れられない鬱憤を抱え、国を追われるように亡命する羽目にもなる。孔子について詳しいことは知らず、こういう人生を送ったのかと知らされた次第。


まぁとにかく宮城谷作品は面白い。