本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

アーモンド/ソン・ウォンピョン

韓国のヤングアダルト小説である。


主人公のソン・ユンジェはシングルマザーの母と、母に対して常に批判的で口やかましい祖母との三人暮らし。つつましくもそれなりに穏やかな家族だが、ユンジェには感情がないと言う障害があった。どんな経験をしても感情が動かないのは扁桃体が小さいせいだという医師の見立てで、これがアーモンドというタイトルの由来となっている。母親はユンジェの松果体を大きくさせるのではないかと考えてアーモンドを買ってきて食べさせてもいた。


あるクリスマスの晩、食事に出かけた三人は街で通り魔に襲われ、祖母は亡なり、母は植物状態に。それでも驚きも悲しみも感じないユンジェを周囲は怪物扱いするように・・・。

 
そしてもう一人の怪物ゴニと関わることになる。ゴニは幼児の時に行方不明となり、見つかったときには乱暴な問題児になっていた。ソンジェの同級生となり、当初、ソンジェに大して理不尽な暴力を振るうが、何も反応しないソンジェに興味を抱くようになり、妙な交友が始まるのだ。


友人や女の子という、青春には必須アイテムが出てきてもユンジェの心はなかなか動かないし、徐々に穏やかならぬ展開にもなっていくが・・・。結末はやや出来すぎながら読後感は悪くない。