本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

あしながおじさん/ジーン・ウェブスター(光文社古典新訳文庫)

孤児院で育ったジュディ・アボットが、篤志家の援助で大学に進み、匿名の篤志家に対し手紙を出し続けるという、言わずと知れた書簡体小説の名作だが、光文社古典新訳文庫に入っていたので読んでみた。このシリーズではケストナーの「飛ぶ教室」新訳が良くなかったので半ば不安を持っていたが、現代的に生き生きとしたジュディの様子を楽しむことが出来た。

子供の頃に何度も読んでおり(姉が旺文社文庫版を持っていた)、二十歳過ぎてからも再読したことがあるのでジュディが活発で行動的で楽しい少女であること覚えているが、かなり自立的かつ進歩的であり、抑圧的な孤児院や不公平な社会に対し皮肉で批判的な視点を持っていることに改めて気づく。作者ウェブスターがこういう社会的思想の持ち主であったのだろう。彼女がマーク・トウェインを大叔父に持つとは本書の解説を読むまで知らなかったが、ユーモアと皮肉はどちらにも共通するような気がする。 

続編のDear Enemyはジュディの親友であるサリー・マクブライドが孤児院長を引き受け、改革に着手する様子を描いたものだが、療養中の妻子を持つ医師とのツンデレ模様が描かれており、これもウェブスター自身の投影であったんだなぁとやはり解説で知った。

今までの文庫に収録されている翻訳では戦前のお嬢様のような「てよだわ」が使われていそうで違和感があったが、本書ではそれが解消され、活発な少女の成長が程よく現代風に描かれている。育ちは孤児院でも人間的には品格があるジュディだからくだけすぎた言葉は使わないが、今風に「じゃね?」とか使ってみたらどうなんだろう(笑)。