本・花・鳥(ほん・か・どり)

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ペンギンの憂鬱/アンドレイ・クルコフ

ウクライナ人作家がロシア語で書いた小説である。本好きSNSの友人が紹介していて読んでみたくなった。

主人公のヴィクトルは売れないジャーナリスト兼小説家で、動物園でリストラされたペンギンと暮らしている。このペンギンが憂鬱症を患っているというなかなかに魅力的な設定で、ペンギンの行動がとてもユーモラス。

ヴィクトルが小説の原稿を持ち込んだ新聞社から、事前に用意しておく死亡記事の追悼文を書いて欲しいという依頼が舞い込む。そして、記事の対象になった人間の訃報が続発し、ヴィクトル自身も何やら不可解な事態に巻き込まれ・・・、と言ったような不条理な物語が、旧ソ連崩壊後の混沌とした状況の中で進行していく。

ユーモアと不条理と不安と時に残酷さがない混ざった小説で、一体ヴィクトルの身はどうなるのだろうと思いながら読み進めていくと、ほほう、こんなオチが・・・、という結末だった。

訳者後書きに村上春樹を彷彿とさせるみたいなことが書かれていたが、国際的なハルキチルドレンなんだろうか。自分はそれほどハルキ的印象は受けなかったが、ユーモアと不条理と不安という点は確かに共通しているような気もする。