本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

やんごとなき読者/アラン・ベネット 

英女王陛下が活字中毒者になっちゃったら、という設定のユーモア翻訳小説。

バッキンガム宮殿へやってきている移動図書館に偶然に遭遇した女王は、借りなくては悪いかなと言う義務感から自室へ本を持ち帰る。ひとつの趣味に偏って没頭してはならないという不文律を守ってきた女王は、本を読むこともほとんどしてこなかったのだが、徐々に読書の面白さに目覚めていき、やがて立派な活字中毒者に。

移動図書館で居合わせた厨房付きの本好き少年を自分の書記として身近に起き、いよいよ読書に耽読していく女王だが、女王の秘書、侍従、首相などはこれが気に入らず、あの手この手で女王を本から引き離さそうとするのだった。

英国の上流階級は知的である必要はない(そういうものは下々にまかせておけば良い)という風潮があるらしく、女王の行動は良識ある人々にとっては反逆的に見えるようだ。しかし、読書を通じて論理性を獲得した女王は無礼な臣下たちに対して見事なしっぺ返しをしてみせる。

ユーモラスで頭が切れて適当に頑固な女王が何ともチャーミング。いかにも皮肉に満ちたイギリスユーモア小説の神髄という感じだ。