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医者には絶対書けない幸せな死に方/たくきよしみつ

亡母の生前には死の準備をしているようでこの手の本は手に取れなかったが、介護を経験した身としては興味のある内容ではあった。


著者の母親は脳卒中発作で三ヶ月間病院で寝たきりになった後に死去しているが、楽には死なせて貰えないその様子を「拷問死」と捉え、そうはならない死に方を模索している。医者は訴えられるの嫌だからなるたけ生かそうとするなど、かなり偏った論調も見られてすべてには賛成できないが、幸せな死に方については色々と考えさせられた。


家で死にたいという高齢者が多い中、結局は病院で亡くなるパターンが8割くらいになるようで、訪問診療医が地域に少なかったら育てていけばいいという介護関係者の弁など、なるほどと思わせる。入院中、しきりに家に帰りたがっていた亡母だが、そのまま病院で亡くなることになってしまったし・・・。


作者の義父の大変な状況についても語っていて、現在、親を介護している人には参考になるかもしれない。しかし、身内のこともネタにしてしまうのねぇ、と思わなくもない。


それにしても、現状でも介護業界の人手不足は大変なのに、もう20年ほど経ったら介護保険や介護労働者などはどうなっているのか、不安になる内容でもある。親の介護からは卒業したが、ふた親を送ってしまうと自分が老いの入り口に立っていることに気付いて愕然とさせられるし、自分が介護を受ける側の年齢になるのもそう遠いことではなく、社会保障がどんどん縮小されている現状を考えるとなんだか暗澹としてしまうのだった。でも面白い本である。

医者には絶対書けない幸せな死に方 (講談社+α新書)

医者には絶対書けない幸せな死に方 (講談社+α新書)