本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

チャリング・クロス街84番地 増補版/ヘレーン・ハンフ

アメリカ人の女性作家がロンドンの古書店と文通を重ねた書簡集。ユーモラスで滋味豊かでほのぼのする。


ヘレーン・ハンフは古書を愛しており、様々な古書の注文を出すが、ユーモラスで時に我がまま気ままな感じもあってまことに楽しい。返信してくるフランク・ドエルは生真面目ながら顧客の要望に精一杯こたえようとしていて好感。


マークス社に親愛の情を持ったハンフは物品の贈り物をしたり(1950年前後のイギリスはまだ統制経済で自由な売買が出来なかった模様)、マークス社の人たちの感謝の念も大きく、あたたかいやり取りはまことに心地よい。


クリックひとつで本が届くような通販サイトではこういうやり取りはあり得なかろうが、個人商店の通販では担当者とのメールのやり取りがあったりして(自分は奄美大島のショップからCDを購入したことがある)、そういう楽しさを想起させる本である。


本書は各国でベストセラーになったということで、後日談も挿入されており、この文章も楽しかった。本好きと本屋の幸福な出会い。