本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

展覧会いまだ準備中/山本幸久

著者お得意のお仕事小説という感じか。
 
主人公の今田弾吉は大学応援団から大学院に進学し、小さな市立美術館の学芸員になっている変わり種。幾ら企画を出しても採用されたことがなく、今ひとつ頼りない感じはするが親切な好人物である。

ある日、上手ではないが不思議な魅力を持つ絵に巡り会い、描き手の乾福助(江戸時代の侍で、本草学の資料のために動物の絵などを描いていた)を調べていくうちに展覧会をやりたいと思うように・・・。学芸員の採用は狭き門らしいが、そこをくぐり抜けても結果を出さないでいる弾吉に内外から「やらなきゃダメなんだ」と声が聞こえて発奮する訳だ。乾福助は何かアンリ・ルソーの絵を思い起こさせる感。

土木畑上がりで美術のことは全然分からない館長やら、大人げない三人の先輩学芸員やら、脇役も個性的だが、基本的に好人物ばかりなので読んでいて気持ちがいい。「凸凹デイズ」の凹組の面々はよく山本作品にワンポイントで顔を出すが、今回は自分勝手かつパワフルな醐宮純子が結構がっつり絡んでおり、わがままなキャラが久々に懐かしい(笑)。