本・花・鳥(ほん・か・どり)

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葛飾北斎の娘・應為

「おんな北斎 天才浮世絵師は、二人いた!」という番組を見た。推測や再現ドラマを交えながら、葛飾北斎の娘・お栄(画号は葛飾應為(かつしかおうい))に焦点を当てたものである。
http://www.ytv.co.jp/hokusai/

お栄は「百日紅杉浦日向子」や「応為坦坦録/山本昌代」に描かれたりしていて、作中ではなかなか魅力的なキャラクターだが、残された作品は少なく、その生涯も謎が多いらしい。

最近、数点の作品が見つかっているのだが、当時、女絵師として生きていくのは大変だったらしく、北斎名義のものに應為の作品があるのではないかということだ。

しかし、残されている彼女名義の作品の先進的なことよ。「吉原格子先の図」の光と影の美しさや遠近法は、西洋絵画の技法を知ってのことらしい。北斎は新しもの好きだったはずで、父親経由で新たな技法を取り入れていたのではないかということだ。
吉原格子先の図は下記にて見られるが、まったくこの光の描き方は美しい・・・
http://www.ytv.co.jp/hokusai/gallery_04.html

技術的には北斎より優れていたが、発想力やダイナミズムではやはり北斎に敵わなかったというのが学芸員の談話であるが、だとしても、あの絵の美しさは十分に鑑賞に値する。

お栄を主人公にする以上「百日紅」を念頭に置いているはずなのに、再現ドラマの描き方に関してはやや不満。お栄は父親を「おとっつぁん」だの「おやじどの」などと呼んではだめで、絶対に「銕蔵(てつぞう)」と呼び捨てにしなければならないのだ(笑)。應為の画号が、父親が「オーイ!」としか呼ばなかったからというのも言っておいてほしかった。

まぁでも、「百日紅」や「応為坦担録」でお栄を知った者としては、その作品が見られただけで大変に満足だった。