本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

あたしの拳が吼えるんだ/山本幸久

小五少女の女子ボクシングをモチーフにしたユーモアスポ根小説である。


シングルマザーに育てられる橘風花はある日歯科医院でボクシングジムの練習生募集のポスターを目にする。興味を示した風花を勧誘してきたのは歯科の受付職員で、このジムオーナーの娘である。風花がボクシングに興味を示したのには訳があった。下級生をいじめる6年生織田公平を殴れたらと思ったから。そして母親を説得し、ボクシングを習い始めるのだった。


意外と素質があった風花は周囲にも励まされ、実力を付けていくが、ここに強敵が立ちはだかるのがスポ根のお約束であろうか(笑)。親子二代で女子ボクシングに君臨する橋本竜子が風花より強いライバルとして現れ、敵意とも友情ともつかぬものが育まれるのもお約束。切磋琢磨して強くなるのであろう。


風花を思いやりつつ尊重する母親、やはりシングルマザーの練習生、この練習生の娘で妙に武張った口調で話す6歳女子(可愛い!)など、脇役キャラも立っている。


ライバルに簡単には勝つことはできないが徐々に強くなる風花を応援したくなろうというものだ。


山本幸久の作品はどれもハズレがなく、つねに幸せな読後感。