本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ/滝本竜彦

第五回角川学園小説大賞受賞作だそうである。

親の転勤により下宿屋で一人暮らしをしているやや自堕落な高校生・山本が、不死身のチェーンソー男と死闘を繰り広げる女子高生・雪絵に遭遇する。退屈に苛まれていた山本は戦う女子高生の姿に感動し、「共に戦う」と宣言するが戦力にはならない(笑)。せいぜい自転車で戦闘場所へ赴く時の運転手であるが、妙ちきりんなコンビの戦いは続く。

絶妙なナイフ投げの技を身につけている雪絵には、何故かチェーンソー男が出没する場所が分かり、「私が行かなければ無辜の人が被害に遭う」という使命感で戦っているが、この部分だけがスーパーナチュラルな要素であり、あとは普通に青春小説の感じだ。

へらへら生きているように見える山本は、友人がバイク事故で死んだことが劣等感になっており、退屈な自分も死んでしまえば楽になれると思っている、それ故にチェーンソー男と戦う雪絵に興味を持ったのでもある。山本にも雪絵にも心の傷があり、それが物語の核になっていて、このあたりが単に切なく甘いだけではなく、青春の痛みを感じさせないでもない。

ヘラヘラ高校生と真剣に戦う女子高生の対比が面白く、雪絵にまとわりつく山本の馬鹿さ加減も笑えるが、ある程度展開が読めるのでほどほどに面白かったという感じだ。