本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

東京タワー オカンとボクと、時々オトン/リリー・フランキー

幼少期からの母親との関わりを綴った私小説


父親は正業が続かず、何やら胡散臭い。で、子供の頃に両親は別居し、著者は母親と暮らし始める。決して裕福な暮らしではないが、子供には不自由させず、様々なものを買い与えてくれたようだ。


著者が成長し、高校入学時から独り暮らしを始めるが、このあたりから自堕落な生活を続けるようになるのは父親に似たゆえか。美大に入って上京すると更にだらしなさに拍車がかかり、母親に何度も金の無心をしている。

母親が60になる頃、東京に呼び寄せて一緒に暮らし始め、やがて病没するまでを看取ることになる。

著者はもうマザコンと言っていいほど母親への愛情が深く、遺体と同じ布団で寝たりしている。このあたり九州人の情の濃さなのか、著者個人の性格なのか。母親の方も子供思いで気のいい小母さんという感じで、親子の情愛が読んでいてしみじみさせる。