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最高の銀行強盗のための47ヶ条/トロイ・クック

9才の時から父親ワイアットの銀行強盗の相棒にされてきたセクシー美女タラは、最近のワイアットの殺人狂ぶりに嫌悪を感じ始めていたが、ストーニーブルックという田舎町でマックスと一目ぼれの恋に落ちる。

マックスは誠実で侠気もあるが、ろくでなしの親戚から薫陶を受けた元不良少年である。正義感の固まりで厳格すぎる保安官の父親(しかも自己啓発本のマニアだ)にちょっとしたしくじりにも異常なまでのしかり方をされていて、お互いに父親に嫌気が差していた二人は、手に手を取って逃避行の旅に出るのだが、どちらの父親も放っておく訳がなく、更に銀行強盗を捜査するFBI(無能な捜査官は、親のコネで今の地位に就いていて、殺害現場や負傷した被害者が大好きな変質者(笑))や、ワイアットの稼ぎを横取りしようとするチンピラも絡んで、ドタバタの追跡行が展開されるのである。

何と言ってもワイアットのキャラが出色だろう。人殺しに禁忌を持たず、痛めつけることも大好き、タラに教え込んだ47か条のルールは捜査の手から逃れるために有効で、だから今まで逃げおおせて来た訳だ。ワイアットの薫陶を受けてきたタラもかなり危ない女である(笑)。

マックスの父親のウィリアムズ保安官は、愛情の持ち方が多少過激だが、やはりマックスを愛しており、この親子愛もホロリとさせる。同じ意味でワイアットにもタラへの愛情があるが、この場合はねじくれていてヤバい。まぁしかし、親子の情愛の物語とも言えるかもしれない。

かようにぶっ飛んだクライムコメディで、退屈させない面白さではあるのだが、見せ場の作り方が派手で人物の動きがスラップスティックというあたりにどこか見たような感じを覚えるのは、著者がアクションやSF映画を撮っていたせいなのかもしれない。