本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

島へ免許を取りに行く/星野博美

著者が自らのルーツを辿った「コンニャク屋漂流記」は面白かったし、タイトルからおそらく合宿免許の経験を綴ったものだと思われ、自分も合宿で免許を取ったので興味が湧いて読んでみた。
 
人間関係がギクシャクしていた40代にひとつのチャレンジとして免許取得を思い立った著者は、ちゃらちゃらしたリゾート合宿を除外していって、馬にも乗れると宣伝している、ほのぼのしていそうな五島列島福江島の教習所を選ぶ。


当初、運転の習熟に苦労した著者は(頭と手足が上手く連動しなかったらしい)、かなりの期間を延長することになるが、長期滞在者(それでも一ヶ月程度だが)として寮長と呼ばれたりしている(笑)。どうしても上手く出来ない運転に苦労し、日々努力の末、ある日開眼するあたりは修行譚の趣き。


物書きとして人間観察も怠りなく、指導員や他の教習生も面白おかしく描き出している。香港での二年間の滞在記などもある著者の筆にかかると、免許合宿もひとつの旅の記録として描かれており、旅行記としても面白い。


自分が行った免許合宿は二度目の教習所で、最初の教習所では取り損ねている。学科を受けるのを遅らせて実技との兼ね合いが悪かったのと、縦列駐車がどうしても上手く出来ず、何時間オーバーしてもみきわめが貰えなかった。しかし、二度目の合宿教習所ではすんなり習得することが出来たので、やっぱり教え方の善し悪しがあるんだなぁと思う。


何とか免許を取得した著者は、今度は東京での運転の習熟に父親に付き合って貰うことになるが、初心者の運転で東京の混雑した道を走るのはなかなかに恐い体験だったのではなかろうかと思う。さすがお父さん(笑)。このやり取りも面白かった。車線変更でクラクションを鳴らされたりしているが、たまに東京の道を走るとき、短い車間での車線変更はお互い様なので、特にクラクションを鳴らされたことはないなぁ。