本・花・鳥(ほん・か・どり)

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夜に猫が身をひそめるところ/THINK  ミルリトン探偵局1/吉田音

作者も主人公もクラフト・エヴィング商會の吉田夫妻の娘という触れ込みだが、実際は夫妻の作品らしい。なんとも紛らわしい。

吉田夫妻の娘である音(おん)は中学生という設定で、一家ぐるみで付き合いのある円田さんの飼い猫Thinkが妙なものを持ち帰ってくるという話から(16個の青いボタンとか光沢ビスと書かれた袋とか)、その由来を推理するミルリトン探偵局を発足させる。そして円田さんとああだこうだ言い合うのだが、合間の章ではその由来が語られて、現実世界とおとぎ話的寓話のような世界が交互に語られていく。

「光沢ビス」と書かれた袋の由来やホルンとテレビを巡る物語が面白く、この構成は村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を思い起こさせるし、物語全体の、おしゃれで謎めいていて優しい感じも初期の村上作品に通底するような気がした。それにしてもオチのすごい事よ。