バツイチの作家が捨てられた子猫を引き取り、愛育しながら愛猫と共に那覇の路地裏を散歩して野良猫探訪をするという、猫好きにも路地裏好きにも楽しい散策エッセイである。
著者は間違って人間に生まれてしまった猫を自称しており(人間の皮を被った猫だとか)、猫と会話も出来るそうである。引き取られた猫は大層器量が良く、向田さんと名付けて正妻に迎えるが(後々ヒトと結婚することがあっても側室になるらしい(笑))、この猫の描写が大変に愛くるしく、そしてなぜか著者に対し京都弁で話すのである。
路地裏散策に出かける時はリュックに収まり、首だけ出しているそうで、猫好きにとってはなんともたまらない状況ではあるまいか。立ち寄り先の飲み屋などでアイドル猫になっているのもむべなるかな。鬱を病む著者も向田さんとの生活で癒やされたようである。
那覇市内は再開発で路地裏が消えつつあり、野良猫が安穏と暮らせる地域も徐々に減っているらしいのが残念。