日本在住の東洋文化研究者で地域再生にも携わる著者が、「かくれ里/白洲正子」にインスパイアされて隠れた名所を経巡った紀行随筆。写真多数。
能登や萩などの有名観光地も出てくるが、確かにさほど派手な土地には訪れておらず、地元に残る文化や歴史を静かな文章で綴っており、旅をする気分で読むことが出来る。
SNS流行りの昨今、ネットで人気に火が付いて旅行者が殺到するようなオーバーツーリズムの問題について触れていて、地域再生って観光おこしも含んでいるんじゃないの?と思わぬでもないが、自分が心地よく感じた場所を紹介したいという思いと、そこが荒されたくないというアンビバレンツは紀行作家について回ることかもしれない。
父親が米海軍の弁護士だったため横須賀に赴任しており、それで子供の頃に親しんだ三浦半島を歩くのが最後の章で、個人的な思い入れがあるだけにこの章が一番読ませるが、ガイジンさんのリゾート地だったことについて懐かしがられると、被占領地の人間としては何だかなぁと複雑な思いを抱かざるを得ない。