主人公の小野寺まりあは幸せな生い立ちではなく、唯一の身寄りである夫に突然失踪され、失意のうちに思い出の地である宮古島を訪れる。
そして、路傍でしゃがみ込む女性(つるかめ助産院を営む鶴田亀子助産師)から声を掛けられ、それがきっかけでつるかめ助産院に居着くことに。妊娠していることを知らされ、出産までの間をつるかめ助産院で過ごすうちに、自身の生い立ちを振り返り、少しずつ再生していくという素敵な物語だ。
大らかで頼りになってややハチャメチャなつるかめ先生を始め、ベトナム人実習生のパクチー嬢とか、旅の途中で居着いてしまっているサミーとか、流れ者の漁師の長老とか、つるかめ助産院に現れる面々もキャラが立っていて魅力的。みな暖かくまりあを見守ってくれている。
出産に至るまでの描写が生々しくて、やっぱり出産は女性にとって大変な事業なんだなぁと思わせた。
失意の女性が出産を通して再生していく、感動的な小説だった。
- 作者:小川 糸
- 発売日: 2012/06/26
- メディア: 文庫