本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

タモリ論/樋口毅宏

笑っていいとも!」終焉の頃に出版されたことで話題になった新書であるが、ヨルタモリも終わってしまったので読んでみた。タモリを孤独を抱えた絶望芸人と捉えてはいるものの、どこからその結論が導き出されたのか、ちょっとしたエピソードを並べているだけで全然タモリを論じてなどいない(赤塚不二夫への弔辞の全文は読み応えがあるが、別に著者の作品ではない)。敬愛するエロカメラマンがタモリについて言及したというだけでタモリブレイクが来たとしており、特にファンという訳でもなさそうだ。お笑いBIG3としてビートたけし明石家さんまについて言及しているが、たけし論の方がよほど詳細な気がする。新書ノンフィクションの体裁で出す必要があったかなぁ。

自分にとってのタモリは怪しくシュールでラジカルな芸を展開する妙なタレントであり、情緒的・感情的過ぎる流行に対する冷笑的な態度も、ヒネクレ青少年には非常に共感でき、とてもかっこよく見えたし、オールナイトニッポンには大いに笑わせて貰った。昼帯番組への起用は、今で言えば江頭2:50を起用するようなものだったという話があるが、エガちゃんよりは一般ウケしていたような気もする。

70年代後半から80年代にかけて放送していた「今夜は最高!」はトークありコントあり音楽ありで大変に楽しい番組だったが、終わり頃に構成が変わり、なんだかつまらなくなった。ヨルタモリはこのテイストを引き継いでいたが、飽きられる前にさっさと終わっちゃったのかしらん。

バラエティ番組に総じて言えることだが、少し長く続くと飽きられることを恐れるのか内容を変えていくことがある。結果、前よりも詰まらなくなって却って見放されるというパターンが多いような気がするのだが、その点、ヨルタモリは賢かったかも。

最近のタモリは、地理・地誌への造詣の深さを売り物にしたブラタモリが面白いが、マニアな部分で隙間を突いてくるタモリ倶楽部は永遠に続けて欲しい番組だ。

タモリ論 (新潮新書)

タモリ論 (新潮新書)