本・花・鳥(ほん・か・どり)

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アフリカにょろり旅/青山潤 

東京大学海洋研究所ウナギグループの研究者である著者が、アフリカに生息するウナギであるラビアータ種を求めてアフリカ右往左往する、汗とほこりにまみれたドタバタ紀行エッセイ。

孵化しても間もないウナギの幼生を発見したという数年前のニュースは記憶に新しいが、責任者の塚本教授、著者、後輩の渡邊俊青年が、体育会的な縦関係で結ばれ、ワッセワッセとアフリカを駆けまわる様子は、椎名誠の「怪しい探検隊」シリーズを思い起こさせた。

当初、アフリカ人に対し妙に高飛車な言動を執る感じが見て取れ、東大といえばエリート研究者だろうしなんか傲慢な感じなどと考えたが、アフリカでは強く出なければ馬鹿にされるという図式があるらしい。「こんなところに日本人」で千原せいじのハードなアフリカ旅を見るから、オンボロ自動車による移動などなんとなくイメージがわくが、ラビアータを求めて政情不安な地域まで遠征しなければならず、その大変さはおそらくバラエティ番組の比ではあるまい。

ちなみにラビアータとは、世界に18種生息するウナギのうち標本が手に入っていない最後の1種で、塚本教授が帰国した後、これが見つからなければ熱血青年二人は日本に帰れない運命である(笑)。

政情不安で人心の荒んでいる国もあれば、貧しくとも人々の陽気さに救われる国もある。そんなアフリカを抑圧状態になるまでウナギを探しまわらなければならない二人がなんとも気の毒だが、何しろ文章が上手い。学者となれば論文も書くだろうし、手慣れたものなのかもしれない。一つの分野に特化したアフリカ紀行としてとてもおもしろかった。