本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

カフーを待ちわびて/原田マハ

 「楽園のカンヴァス」がベストセラーになった著者の第一回ラブストーリー大賞受賞作とかで、真っ向勝負の恋愛小説である。

沖縄の与那喜島で雑貨屋を営む友寄明青は、家族はなく、愛犬カフーと暮らしているのほほんとして内気な青年である。イケてる幼なじみ俊一が持ち込んできたリゾートホテル開発計画に島じゅうが乗り気になっている中、明青は、裏のおばあ(ユタであり、血縁ではないが明青の家族のような存在)と依怙地になって反対しているが、俊一の勧めでリゾートホテルの視察に行った先で「嫁に来ないか」と絵馬を書いてきたところ、それを見たと思しき幸という女性から「私をお嫁さんにしてくださいますか」という手紙が舞い込む・・・。

そして実際にやってきた幸とおっかなびっくりの共同生活を営むうち、徐々に幸に惹かれていくが、幸の持つ過去が謎っぽくて、やきもきする明青同様に読者も物語に引き込まれていく。

幸の持つ謎が徐々に明らかにされていく過程がなかなかスリリングで、伏線もよく利いている。そして、単なるハッピーエンドではなく、ちょっと苦く希望に満ちた結末がいい感じだ。「幸せ。いい知らせ」という意味合い。犬のカフーと合わせてなかなか上手い設定である。

ひとつ文句を言えば、騒動を巻き起こした明青の友人が、騒動の種が自分であると知ってものほほんとしているのはどうなのか。もう少し申し訳なさそうにしろ!(笑)。