本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ぐるぐる猿と歌う鳥/加納朋子

文庫化にて再掲。



加納朋子が児童向けミステリー叢書「講談社ミステリーランド」に書き下ろしたミステリー風味の少年小説である。

主人公の高見森(タカミシン)は無鉄砲でへそ曲がりな小学五年生だ。父親の転勤で北九州の社宅に引っ越し、地域の子供達と知り合うと、パックという不思議な少年がいることを知る。パックはホームレスの少年で、小学生のふりをしながら社宅の子供たちの家を泊まり歩き、自由に生きているハックルベリー・フィンのごとき少年なのだが、闊達で聡明で、子供たちの抱える謎(森には誘拐されかけた過去があるが、助けてくれた少女あやはなぜ存在しなかったのか?)を鮮やかに解いてしまうのである。

このあたり、安楽椅子風ミステリーではあるが、物語の主眼はむしろ、パックの生い立ちの謎や、パックを守ろうとする少年たちの戦いであろう。やんちゃで正義感に溢れていてまっすぐな少年少女が何とも楽しくまぶしい、正しい児童文学だ(笑)。主人公は「坊ちゃん」、少年少女たちの協力によるトラブル解決は「エーミールと探偵たち」に似通う気もするがどうだろうか。