本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

俳句、はじめました/岸本葉子 

人気エッセイストによる俳句入門記。

初心者にしては卒なく作っているように見えるが、句会で指摘される誤謬や、初学者のやりそうな失敗や焦燥感をユーモラスに綴っていて楽しい。

写生が重視される俳句において、兼題(そのときのテーマとして出題される季語)も見たままに書かなくてはならないと思い詰め(自分の記憶の中から引っ張り出してくるのは著者的には不可)、でもそのままでは詰まらないから何とか世界を深めようと考え、徐々に思考を発展させていく状況が、いかにも高学歴の著者らしくお勉強的だ(笑)。

文芸とは遊びであるからルールに縛られすぎるのはよろしくないと思うが、初心者のうちに自己流でやってしまうと基礎が出来ていないので邪道になりがちだし、基礎をしっかり体得すべきなのはいかなる世界でも同じだろう。その点で著者の執っている方法は正しい(ただ、ルールに縛られすぎて詰まらなくなっている保守的な俳人が多い)。

優等生初心者がどのように己の世界を構築するのか興味のあるところだ。ただ、岸本女史の著作を読んだのは初めてだが、余白の多い文体はさらさら読めすぎて物足りない(笑)。