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東京ナイトメア 薬師寺涼子の怪奇事件簿/田中芳樹

頭脳明晰・傲慢不遜・才色兼備・傍若無人で格闘術は飛び抜けており、実家は警備会社を核とする巨大コンツェルンの大富豪というスーパー女王様キャラのキャリア警官薬師寺涼子警視が怪奇な謎を(無理矢理に)解決してしまう痛快シリーズである。

上は警視総監から下は平警官まで、再就職でお世話になるため涼子に頭が上がらず、会社を駆使して入手した情報で政治家の弱みを握るため「日本のフーヴァー(政治家の弱みを握っていたとされるFBI長官)」とも呼ばれ、「ドラキャラもよけて通る」から「ドラよけお涼」とあだ名される、実に凄いキャラクターだ(笑)。

大体この手の非常識キャラには実直な脇役が付いていたりするが、本作の場合はノンキャリの警部補泉田が、忠臣、祐筆、副官などと呼ばれながら常識的に補佐している。この傍迷惑ぶりはどこかで覚えがあるぞと思ったら、京極夏彦の「百器徒然袋」シリーズに登場する万能探偵・榎木津と瓜二つだった(笑)。語り手が実直そうであるところもよく似ている。

初めて読んだ薬師寺の怪奇事件簿シリーズだが、二作目であるらしい(第一作は「魔天楼」)。エリートな親戚の結婚式に嫌々出席したドラよけお涼の目の前に死体が降ってくるというオープニングから、不気味な生物やら腐敗した権力者やら怪物やらが登場し、馬鹿馬鹿しくもノンストップな面白さの百鬼夜行ホラーポリスアクションである。