有能で冷血でニヒルでサディスティックな同心(しかし妙にユーモラス)、実直な初老の岡っ引き、暗い過去を引きずりながら真っ当に生きようとしている小間物屋の関係をを耽美的な文章で描いて読ませるシリーズだ。
陰惨な暗い過去を過去を断ち切ったつもりの遠野屋だが、木暮信次郎が曰く付きの死体を検めたところからまたもや過去のしがらみが絡みついてくる。若者が必死で隠そうとした秘密を探り当てた遠野屋は故郷に乗り込み、過去との決着を付けようとする。
第一作「弥勒の月」は過酷かつ叙情的な筋立てが印象的だったが、遠野屋のベクトルが徐々に明るい方に向かっているのでその分凄みは減った感がある。木暮信次郎と遠野屋もお互いを警戒し、怪しみ、畏れているが、多少は歩み寄りつつある感があり、やっぱり凄みは減るがこの関係がどこへ向かうのか興味が湧く。最新作も出ているようなので楽しみだ。