本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

天使はモップを持って/近藤史恵

新入社員梶本大介が社内で直面する様々な謎を、ビル清掃作業員キリコが鮮やかに解き明かす連作ユーモアミステリー。

本書の魅力は何と言ってもキリコである。年齢は不詳ながら二十歳前くらい、コギャルのごときファッションの明るく小生意気な女の子で、嬉々として清掃業に打ち込んでいる。

語り手の大介は、女性ばかりの職場でからかわれていることに辟易している、いかにもユーモアミステリーに登場するのほほんタイプの人物で、お約束通りであるが、スラスラと安心して読める筋立て。

社内の人間関係はいろいろとドロドロして時折悪意もほの見えるが、それも気持悪くない程度にさらっと描いていて好感が持てる。ラストの一作は大介自身のエゴもからみ、更に意外などんでん返しが待っていて楽しめた。

これで打ち止めみたいな終わり方だが、続編が出ているので人気があったのかもしれない。