瀬戸内海に浮かぶ冴島(架空)を舞台に四人の高校生を描いた青春小説、という構成だけれど、それだけではないところがいかにも著者らしい。
開明的な村長がIターンやシングルマザーの移住を呼び入れて人口を増やし、島のおばちゃんたちを集めて地場産品の会社を作ってそこそこの商売にしている冴島だが、そこはやはりいわゆる「田舎」の面倒くささや因習もあったりして、一筋縄ではいかない。
島から本土の高校に通うのは四人だけなので、登下校も同じ四人組は一応は仲が良いが、リゾートホテルを営む父親を持つ源樹はニヒルでふてくされているし、父親のいない朱里と網元の娘の衣花は仲良しで、どちらも生い立ちゆえの若干の面倒くささが描かれたりするのも上手い。のほほんとした新は何となく癒やし系(笑)。
胡散臭い自称作家が島に幻の原稿を探しに来たり、頼りない青年が差出人不明の移住資料を見て移住を決めたりするのもミステリー作家らしく伏線が効いている。
進路を考え始めた四人の爽やかさが気持ちのいい島小説。