本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

飛ぶ教室/エーリヒ・ケストナー(池田香代子訳)

生涯の座右の書とも言える「飛ぶ教室エーリヒ・ケストナー」の池田香代子岩波少年文庫版を読んでみた。

講談社文庫版の「戦前の格調ある少年小説風」とも、光文社古典新訳文庫版の軽薄で甘ったれた現代風とも違い、昭和40年代に少年時代を送った者には非常にしっくり来る自然な言葉遣いが読みやすい。

ただ、二人称としての「おまえ」はどうなんだろう。どこか上品な振る舞いをするこの少年たちには「君」を使わせてみたい。それと、「あったりまえ」と「よっしゃー」はちょっとダサい(笑)。

物語の方は何度読んでも胸にしみいる。少年たちの勇気と友愛、少年たちに対する大人の思いやり、大人たちの友情と、読みどころはたくさんあり、戦前に反体制的として焚書の目にあったケストナーらしく、正しいメッセージが随所にあるが、それが鬱陶しくなく自然に伝わってくる感動作。