本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

月の立つ林で/青山美智子

タケトリ・オキナが語る「ツキない話」というポッドキャストを聞いている様々な人々を描いた連作小説。


仕事で挫折し、看護職以外の職に就こうとしている元看護師、芽の出ないお笑い芸人、両親が離婚し、母親に疎まれていると思っている女子高生、娘にできちゃった結婚され、なんとなく置いていかれたようで面白くない頑固親父、アクセサリーの製造が内職を超え、夫の収入より多くなって夫を疎ましく思い始めているアクセサリー作家など、登場人物は様々だが、共通点は「ツキない話」を聞いていることと、心が疲れていること。


「ツキない話」は月に関する様々なうんちくを語ることで、聞いている人々にほんの少し影響を与えるが、変わろうとするのは疲れた人々自身であり、ポッドキャストはきっかけに過ぎない。このあたりの描き方が絶妙。登場人物が少しずつ関わっていたり、最後に伏線回収があったりするのもいかにも青山作品。相変わらず読後感のいい作家である。