本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

お探し物は図書室まで/青山美智子

文庫化による再掲、と言うなの使いまわし(笑)。


小学校に隣接するコミュニティハウスを様々な所用で訪れた人々(皆それぞれ鬱屈を抱えている)が、館内の図書室にふと立ち寄り、レファレンスコーナーで希望するような書物を調べて貰おうとすると、そこには巨大な女性が座っていてぎょっとさせられる。


しかし、深いところに響いてくるような声の持ち主で、利用者の希望を聞き出し、目にも止まらぬ早業で資料メモを作成してくれ、これには必ず直接の希望とは関係ないような書物が付加されていて、それが利用者の悩みを解決してくれると言う、魔法使いのような司書なのだ。


総合スーパーの婦人服売り場でキャリアを築けるか悩む若い女性社員、アンティークが好きで将来的にはお店をやりたいが安定した生活を捨てられず悩んでいる30代サラリーマン(婚約者の女性がなかなか素敵だ)、キャリアウーマンとして雑誌の編集に携わっていたが、出産を機に閑職に追いやられてしまった女性、イラストレーターになりたい夢を持ってデザイン学校に進んだが夢は叶えられず、仕事も上手く行かなくて引きこもる30才ニート、定年退職で自分の立ち位置を見失っているおじさんなど、それぞれにまつわるエピソードも丹念に描かれていて説得力がある。最終的に人生上手く行って出来すぎだろうと思わぬでもないが、いい読後感。


職場と同じ建物に入っている公共施設に同じような図書コーナーがあってよく利用するが(人気の本がしれっと棚に並んでいたりする)、同じような規模だろうか。ただし、詰めている職員は館内すべての管理を担当していて、凄腕の司書はおそらくいない(笑)。