加納朋子の小説は以前はよく読んでいたものの最近はすっかりご無沙汰だったが、音楽の要素のありそうなタイトルだと思って手を伸ばしてみた。中学吹奏楽部の親たちの奮闘をユーモラスに描いている。
主人公、山田陽子は出版社でバリバリ働く有能編集者であり、小六から中学に進学しようとしている息子、陽介の母親である。陽介は父親の上司の息子に憧れ、私立校の吹奏楽部でトランペットを吹きたいと熱望してお受験するが失敗。公立校に進み、吹奏楽部に入ればトランペットではなくファゴットを担当させられるとメソメソするような気弱男子だ(母親と大違い)。
働いているからという理由で親の会の業務から逃げようとする陽子だが、そうは問屋がおろさず、様々な雑用を引き受けることに。有能でパワフルだが、決して人格者ではなく、早速吹奏楽部の顧問に噛みついたりしている(笑)。
そして親の会で権力を握り独裁体制を布こうとする俗物もいて、その対決はハラハラドキドキ、手に汗握る面白さだ。
それにしても吹奏楽部の親たちの大変なことよ。少年野球の保護者がかなりの労力を提供させられるらしいことは聞いているが似たような感じがする。バラバラに自分勝手な主張をする親たちがやがてまとまって来るあたりが読みどころ。ミステリー作家の加納朋子作品なのにミステリー要素はないのかと思ったら、一部のエピソードにそういう要素が出てきた。山田陽子の名推理が冴える。
親たちの奮闘をドタバタと描いて面白かった。前編である「七人の敵がいる」も読まなければ。