本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

みとりねこ/有川ひろ

猫と人とのほろりとさせる関わりを描いた猫短編集。猫と飼い主の旅を愉快に描いた「旅猫リポート」外伝二篇、「アンマーとぼくら」のスピンオフ一篇も収録されている。
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どの作品も読ませるが、特に印象的なのは「シュレーディンガーの猫」。社会性ゼロの中堅漫画家の夫、元副担当編集者で強気きわまりない妻とのドタバタが笑わせてくれる。何しろ、妻から妊娠を告げられたときに悪気なく「おれの子?」「(自分が父親になるなんて)信じられない」と口に出し、冷たく責められたりする夫である。


出産して赤ん坊と共に帰宅した妻は、猫の飼育セットがあることに疑問を抱いているところに後ろめたい夫が帰宅。三週間前に捨て猫を拾ってしまったことを言い出せずにいたのだ。当初は子育て猫育ては無理と思っていたが強気妻だが、猫の可愛さにほだされ・・・。社会性ゼロの夫も、子猫の面倒を見ていた三週間で人間らしさを獲得していたりするのである。笑えてハートウォーミングでしみじみさせる好短編。


表題作「みとりねこ」の飼い猫浩太は、飼い主より長生きするためには猫又になるしかなく、それには手続きの書類にはんこを捺さなければならないと考え、練習のため肉球をしょうゆに浸けてそこらにぺたぺたやっているのがニャンとも愛らしい。