疎遠な仲で、遠地に暮らす兄が急死し、その後始末の顛末を描いたエッセイ。認知症の義母を描いた「全員悪人」とか、この著者は家族を題材にすると筆が冴える感。
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偏屈で金にだらしなく、母親と共依存であったような兄は、母が不治の病になった時、逃げるように宮城県多賀城に移転してしまう。その際、保証人となるよう頼まれた著者は断固拒絶するが拝むように母親に頼まれ、渋々引き受けると、案の定、家賃を溜めて請求が来たりしている。
そして、病をこじらせ兄が急死すると警察から連絡があり、後始末のために兄の別れた妻と共に多賀城に赴くのであった。
汚部屋に暮らしていた兄の後始末はなかなかに大変だが、それもまぁエッセイの題材にはなろう。疎んでいた兄の来し方を思いながらの後始末は多少の思慕も含まれている。多賀城の街の描写も情緒的であり、著者にとってこの後始末は兄に別れを告げるためのセンチメンタルジャーニーなのではと思わされた。
時にユーモラスな筆致でサクッと読める好エッセイ。