本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ハケンアニメ!/辻村深月

アニメに携わる様々な人間模様を描いた連作長編。ハケンとは派遣ではなく覇権で、そのクールで話題性・視聴率・パッケージの売り上げなどでトップを取ったアニメのことを覇権アニメというそうだ。


途中で仕事を投げ出す天才肌かつ問題児の監督、その監督に良質な作品を作らせようとする女性プロデューサー、萌えを排除した正しい少年少女アニメで覇権を目指す女性監督、売り上げしか頭にない俗物のように見えるが、作り手や作品の質を大事にしているプロデューサー、神原画を描くオタク気質の女性アニメーターなどが、章ごとに主人公を務めながら少しずつ関わっていく。


その根底にあるのはアニメへの愛で、みんなそれぞれにいい作品を作るべく頑張っているのだ。ガンダムとヤマトくらいは見ていたが、大人になってからはアニメには疎く、昨今のアニメ事情には全然詳しくないが(話題になったガルパンの最終回は見た(笑))、作り手もファンも、みんなアニメを愛しているのが清々しい。最終場面の登場人物の述懐が本作のキモであろう。

-ここで働けて幸せだ、心の底から思う。
 アニメもフィギュアも、男も女も、この業界周りで働く人たちは、皆、総じて“愛”に弱い。自分のやっていることに誇りを持っています、これが好きです、というのを見せられてしまうと、簡単にたらされ、ほだされてしまう。
 そうやって盛り上げた後の話で、結果、愛だけじゃどうにもならないお金の問題が発生して揉めたり、地味な作業に地獄のように追われることになっても。
 この業界の人は、やっぱり、皆、総じて、愛の人だ。


ハケンアニメ!

ハケンアニメ!