本・花・鳥(ほん・か・どり)

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空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー渓谷に挑む/角幡唯介

タイトル通り、人跡未踏地帯の探検に挑んだ記録である。

ヒマラヤ沿いにあるツアンポー渓谷は、インドがイギリスの植民地だった時代に数人の探検家・プラントハンターなどが踏査しているが、激流と急峻な断崖に阻まれ、21世紀になっても未踏地帯が残っていた。1990年代から再び探検隊が趣くようになり、新たに滝が発見されたりして、早大探検部に籍を置く著者の欲望もメラメラと燃え上がったというわけである。

自身の探検記録と探検史が交互に描かれ、読み応えのあるノンフィクションである。2003年の探検では未踏部分をほぼ踏査しているが、残した部分に未練があり、2009年にも探検を敢行、しかし政情が複雑な土地柄でもあり、許可のないまま潜入し、寒波に降り込められ、這々の体で脱出してくることに。対岸に村が見えても渡る手段がなければそこで終わりかもしれない、などというギリギリの冒険行は無謀・無計画・無軌道の感もあるが、危険がなければ魅力を感じないのが冒険家の業であるらしい。若さゆえの衒気が感じられなくもないが、まぁ、迫力はある。

しかし、世界中の衛星写真に簡単にアクセス出来る時代であっても、自分の足で歩いてみなければ分からないことがあるんだなぁ。

自分は至ってインドアな人間なので、過酷なアウトドアライフなどはまっぴらご免なのだが、読んでいる分には大変に興味深い。この手のサバイバルものでは

「凍/沢木耕太郎http://d.hatena.ne.jp/suijun-hibisukusu/20120111/p2
「エンデュアランス号漂流/アルフレッド・ランシング」http://d.hatena.ne.jp/suijun-hibisukusu/20051019/p1

が面白かったなぁ。