本・花・鳥(ほん・か・どり)

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遺訓/佐藤賢一

著者の「新徴組」の続編に当たるような作品で、明治維新後の旧庄内藩西郷隆盛の関わりを描いている。
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奥羽越列藩同盟で唯一不敗のまま降伏した旧庄内藩は、敗戦後に温情をもって処遇した西郷隆盛を崇敬しており、薩摩との紐帯を深めていたが、維新後の騒然とした雰囲気は収まらず、国際紛争や不平士族の反乱などが相次ぎ、薩摩と繋がりのある旧庄内藩も政権から警戒視されている存在だ。


明治政府で実権を握る大久保利通は陰険な策謀家として描かれ、旧庄内藩を敵視し、様々な嫌がらせを仕掛けてくる。士族をプライドだけ高く、政府に従わぬ者として、これを殲滅せんと考えているのだ。


庄内藩の沖田芳次郎は沖田総司の甥になる、江戸育ちの庄内藩士で、剣の腕を見込まれ、藩内に潜り込んだ密偵を狩り出したり、藩の重鎮の護衛にあたったりと活躍しているが、西南の役においては西郷隆盛の護衛となり、鹿児島で大久保の密偵と命がけの対決をすることに。このあたりの描写は迫力満点。


佐藤賢一の歴史作品では、ヒーローに嫉妬するナンバー2という存在がよく描かれるが、本作では大久保利通が正にそんな存在で、西郷を葬るべく様々な策謀を仕掛けている。滅ぶヒーローという点で西郷はいかにも佐藤作品にぴったりだ。


歴史小説と言うには虚構が大きすぎる気がするが、颯爽たる沖田芳次郎の活躍が楽しめる明治活劇である。 

遺訓

遺訓

  • 作者:佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/12/22
  • メディア: 単行本



一週間ほど前の富士と雲

冠雪が増えてきた。
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モコモコ感のある積雲。
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