本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

絆回廊 新宿鮫Ⅹ/大沢在昌

キャリア警官ながら出世街道からはずれ、有能な一警官として淡々と生きる鮫島を主人公とする新宿鮫シリーズ第十弾。久々に読んだがやはり面白い。


物語の発端は、妙に昔気質な売人から鮫島が「警官を殺したいからと拳銃を求める男がいる」と聞きこみ、そこから、やくざ、残留孤児二世の反社会的組織、中国の不法勢力などが絡んで、物語は緊迫していく。鮫島の恋人で有名になってしまったロックシンガーとの行く立てなど、サイドストーリーも読ませる。


凶悪な殺人者、彼を愛する支援者、最後に義理立てをするやくざなど、凶暴さの中に悲しみを垣間見せる登場人物たちが胸を打つ。暴力の中に漂う詩情はハードボイルドの真骨頂だなぁ。