本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

眠る狼/グレン・エリック・ハミルトン

主人公のバン・ショウは米陸軍の軍人で、負傷休暇を取って故郷に戻ってきた。10年間疎遠にしていた祖父から「戻ってきて欲しい」と懇願されたのだ。しかし、祖父の家に着いた途端、祖父が銃撃されたところに出くわす。そして、バンの犯人捜しが始まるのだった。

祖父のドノは表向きには酒場の経営者だが、実は名うての窃盗・強盗のプロである。バンも犯罪の手ほどきを受けながら育ってきたが、あることが契機になって18歳の時に祖父と決別する。祖父は暴力的で厳格でもあるが、孫に対する思いも描写されていて、ハードなクライムノベルに漂う抒情が心地よい。

強盗事件も絡んで幾つもの山場があり、祖父銃撃の真相が判明する結末まで飽きさせずに物語は進んでいく。うーむ、そういう真相だったとは・・・と、種明かしに驚く。

銃撃の犯人捜しに祖父と孫の描写が趣を添えて、読み応えのあるミステリーだった。思えばハードボイルドと詩情というのは仲良しだわね。