本・花・鳥(ほん・か・どり)

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カコちゃんが語る植田正治の写真と生活/増田和子

植田正治という写真家についてはたまに美術番組で見る程度で、さほど多くは知らない。戦前から創意工夫に満ちた楽しい写真(植田調と呼ばれる)を撮っていた人で、家業の写真館は夫人に任せて自分は写真道楽にどっぷりつかっていたらしい。本書は、植田正治の娘であり晩年の世話をした著者が、父親の人となりと生活ぶりをあたたかく顧みたエッセイである。

植田正治は家庭ではハイカラな良き父親であったようだが、写真に関しては頑固で、家族をモデルに個性的な傑作を残している。非現実的でとぼけた作風はシュールレアリスムの影響を受けているようにも思わせるが、妙ちきりんな魅力に満ちている。

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デジタル時代となって変容してしまったと思われる写真館の在り方も興味深い。フィルム、暗室、現像液などと言ったアイテムが書き連ねられ、写真が特別なものであった時代を思わせて懐かしい。

写真・カメラ好きなら楽しく読めるであろう好エッセイ。