バース警察署のピーター・ダイヤモンド警視の活躍を描くシリーズ8作目。
混み合う海水浴場で単独の海水浴客が殺された。衆人環視の中、目撃者はない。捜査に当たるボグナー・リージス署のヘンリエッタ・マリン主任警部は被害者の身元を突き止めるのに苦労するが、バース署管内の行方不明者からある異常犯罪に携わるプロファイラーであることが分かり、主人公ピーター・ダイヤモンド警視が捜査に絡んで登場してくる。
国家犯罪機関(警察庁のような組織?)が事件の真相を明かそうとしない中、ダイヤモンド警視はブルドッグのように組織の雲上人に食らいつき、被害者が連続殺人のプロファイリングに携わっていたことを知ると、プロファイラーの殺害事件をのみ解決するという名目で殺人鬼とも対決することになるのだった。
頑固で横柄でタフなダイヤモンド警視は相変わらずで、適度の軽口で笑わせてもくれるが、前作「最期の声」http://d.hatena.ne.jp/suijun-hibisukusu/20130121/p2で愛妻ステファニーを失った傷は癒えておらず、そのあたりの描写に切なさが漂って感傷的。上手いなぁ。
ボグナー・リージス署のマリン主任警部のキャラも良い。小柄で活発で活動的でヘン(めんどり)というニックネームを持つ彼女は、男社会の中でもまれてきて、葉巻を吸うという悪癖を身につけてしまった女傑である。当初はダイヤモンドに対抗心を燃やすが、彼の的確な捜査にやがて彼を認めていく。
もう一人、魅力的なのはある大企業経営者の未亡人(元ポップスター)である。年の離れた経営者と恋に落ち、四年間の結婚生活で莫大な遺産を手に入れたと陰口を叩かれているが、夫を本当に愛していたことが伺えて微笑ましい。派手好きでわがままだが、まっすぐな気性の強い女性であり、彼女のキャラもなかなか良かった。危機に落ちたときの落ち着いた態度もかっこいい。
事件はダイヤモンドの活躍によって解決されるが(ミステリーのレビューでこれくらいはネタばらしではなかろうと思いたい(笑))、連続殺人の方に携わっていた若手エリートが得意の鼻をへし折られ、ダイヤモンドに敬意を持つようになるところも痛快。やはりこのシリーズは面白いなぁ。
このシリーズの最新作は「処刑人の秘めごと」で6年前の出版である。高齢であることを考えればこれ以上新作が書かれることはないかなぁ・・・。息子も作家だそうだから、書き継いでくれると嬉しいのだが。