本・花・鳥(ほん・か・どり)

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宮城二泊三日の旅4 蛇田矢本ウロウロ&さらば石巻篇

二泊目は蛇田のルートイン。1000円の違いで設備の快適さが全然違うが、郊外型の展開なので街中の面白さはない。そういえば夜の石巻を散策したかったなぁ。いち早く復興したのは歓楽街だというのは叔父からの情報。翌朝のバイキングはメンチカツに焼きそばとなかなかハードだった(笑)。

門脇の白謙*1工場売店が開くまで石巻港インター周辺を散策。生花市場の前を通り過ぎたが、あそこは遺体安置所になったところだった。普段、大勢の人が亡くなった場所などには近寄りたくない臆病者なのだが、縁があると思えば生花市場も南浜町も中瀬も恐怖がわかない。あまりに見物気分なのも申し訳ないけれど。

石巻港インターを少し北上したあたりで見られる、青田が広がる中に島のように里山が浮かぶ田園風景が好きだ。東北道三陸道を走っているとよく見る景色だが、「日本の正しいふるさと」を思い浮かべる。

旧北上川や北上運河や矢本の湖沼など、石巻近辺は水辺の景色が美しいが、それゆえに大きな被害も受けたのだろう。北上川は堤防を高く積み上げるので、水辺の景観がなくなるそうだが、防災のためには致し方ない。矢本あたりで渡った仮設橋は、こころ旅で火野正平が渡っているのを以前に見たところだが、正式な橋はちぎれたままだ。

仙台〜石巻間は仙台南部道路・東部道路・三陸道を使うのが一番早いだろうが(1時間半が1時間になっただけだが)、それぞれに料金を徴収されるのがばからしく、松島から大和インターへ出る道がいいかなと思って通ってみたところ、これがあたりだった。交通量も信号も少ないので、スピードの出し過ぎに注意すれば有料道路の如く快適なのだ。東北道に出るまで1時間程度だから、有料道路経由で仙台南インターに出るのと変わらない。

それにしても異様に暑い宮城だった。真夏の宮城なんて冷房いらずの筈だったのに、汗をだらだらとかくありさま。東北道の温度表示が35度ってありえない。

井上靖の「北の海」は、旧制沼津中学を卒業した主人公が、柔道部OBとして部に出入りするなどのんきな浪人生活を送っている様をユーモラスに描いた自伝的青春小説。作中、スカウトに来た四高(金沢の旧制高校)柔道部員の「寝技中心で、練習量がすべてを決定する柔道」に魅了され、四高の合宿に飛び入り参加して夏を過ごし、秋になりかけた沼津に引き揚げてくる来る主人公が「ひどく贅沢な時間が終わってしまったような気がした。」と述懐する場面があったように思うが、仙台や石巻からの帰路に就く際、同じような感慨を持つ。

縁があると思えば、よくは知らない土地でも何か懐かしさを感じるのだなぁ。かつて泊めて貰った叔父の家がもうないことを考えると、懐かしさは募るばかりである。


北上運河

この景色が好きだ。津波をかぶって枯れた木もあるけれど、風情ある景観が残っていてほっとする。

石巻港インター付近

こころ旅で火野正平が自転車を押して渡った橋の近く。
美しい水辺の風景だが、土嚢が被災地であることを思い起こさせる。

*1:石巻の有名な笹蒲鉾店。通販も首都圏の扱い店もありますので是非ご利用ください。http://www.shiraken.co.jp/shop/corp/default.aspx