本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ギフト/日明恩 

作家名は「タチモリ メグミ」と読みます(笑)。

主人公の須賀原は警官を退職した男で、レンタルDVDショップの店員をしながら逼塞して生きている。追跡ののちに中学生を死に至らせてしまったため、心に深い傷を負っているのだ。仕事中、ホラー映画の棚の前で涙をこぼす中学生・明生が気になっていたが、町中で行き会い、知り合うと、明生が死者の霊や、人間の過去を見ることが出来、そのことで大きく傷つき、両親は不仲になっていることを知る。そして須賀原は、自分が関わってしまった死者について知りたくて、明生の力を借りようとするのだった。

その過程で須賀原は、交差点で事故死した老女の霊や、幼い時に死んだのに赤ん坊の弟が心配で十数年もさまよう幼女の霊などの事情を明らかにしてやるのだが(この幼女の事情が凄く悲しい)、死者の思いの健気さにふと感動し、笑みを浮かべそうになっても、自分には笑うことは許されないのだとまた殻のうちに閉じこもる心の傷が痛々しい。

特殊な能力による明生の悩みが終わったわけではないが、それでも須賀原と出会えて明生も救われたのだろう。ラストシーンの、センチメンタルな別れにも幾らかの安堵感が漂っている。こういう心の傷とそこからの救済を描かせるとこの作家は上手いものだが、ゴーストファンタジーを書くとは思わなかったなぁ。