本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

青年のための読書クラブ/桜庭一樹 

文庫化(新潮文庫)にて再掲。


良家の子女が通う聖マリアナ女学校の読書クラブの事件を100年のスパンでミステリアスに描いた学園小説。

生徒会(家柄の良さを誇る政治的な集まり)、演劇部(美貌)という二大エリートを筆頭にしたヒエラルキーの中で、読書クラブは頭でっかちな異端者が集う辺境である。彼女たちの精神的ルーツは第一次大戦前のパリに生きた享楽的な無神論青年ミシェール(聖職者の家に生まれながら5歳にして「神などいない」と宣言して父を嘆かせ、長じては享楽的に生きている)にあり、学園の成り立ちとも関わる彼の人生が印象的だ。

ミシェールの精神的子孫が読書クラブの少女たちで、中央に対する反抗をいろいろと画策しては学園の正史に残らない暗黒史を書きつづっていく。昨今のエンターテインメントには珍しく、会話よりも地の文で物語を紡いでいるが、このアナクロい文体も魅力的である。

きみ・ぼくで話す生意気な少女たちには宝塚の舞台上のような感があり、作り物としてのリアリズムを感じさせて上手い。シニカルな視点の学園小説として大変に面白かった。