本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

おやき

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おやきは信州名物の軽食である(元は主食だったと思う)。小麦粉を水で練り、味付けしたナス、キャベツ、野沢菜などを入れて丸め、フライパンで焼くとか、蒸すとか、いろりの灰の中でいぶすとかしたもので、素朴ながら非常に懐かしい美味だ。おそらく米が出来ないとか、米は年貢に収めて食べることが出来なかったとかの理由で生まれた粉食文化なのだろう。

おやきを知ったのは10〜11才頃、父の転勤で一年半ばかり長野市内で暮らした時のことだった。甘い物よりせんべい系統の方を好む子供だったので、「なんて美味いものなんだ」と大変に気に入ってしまったが、わざわざ買って貰えるものでもなかったように思うし、他家から貰うとか、そんなことで知ったのではないかと思う。

おやきを応用したものなのか、長野の今川焼き大判焼き)には野菜入りがあった。野菜炒めが入っているもので、これもなかなかの美味であるが、長野を離れて以来、ほとんど食べていない。

先日、長野時代に家族ぐるみで付き合っていた家の小母さん(父の同僚の未亡人である)が母宛におやきの詰め合わせを送ってきてくれたが、久々なので、何とも懐かしく嬉しかった。スキー土産としてでも徐々に広がったものか、昨今は結構名前が知れ渡っているし、通販で簡単に取り寄せられるようになっているが、こういうものはたまに貰い物で味わうところにありがたさを感じるのではないかと思う。何でも簡単に手に入る世の中は、便利なようで味気ない。



ところで、終戦の日にこんなのんきなことを書いていて良いものかとも思うが、のんきにしていられるのも平和のおかげなのだと思うことにした。