本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

この夏の星を見る/辻村深月

コロナ禍でほとんどのクラブ活動が制限されていた2019年夏、茨城県の砂浦三高の天文部も夏の合宿が取りやめになった。また、何校かで行っていた、確認できた天体の数を競争するスターキャッチコンテストの開催も危ぶまれていたが、ネットでスターキャッチコンテストを知った理科部の中学生がコンタクしてきて、リモートでスターキャッチコンテストが開催されることに。


その他に参加するのは五島列島天文台に集う高校生や、宇宙線を観測している高校生。皆、コロナ禍に抑圧されて何らかの葛藤を抱えていたりするが、自分たちで望遠鏡を作成し、星を掴まえることに熱中する。


マスク、消毒、ソーシャルディスタンスなど、コロナ禍のキーワードが出てきて、そういえばあの頃はそうだったなと当時の閉塞感を思い出すが(都道府県ごとの感染者数に戦いたりとか)、もうすっかり過去のものになってしまった感もある。


スターキャッチコンテストが開催され、あぁみんな良かったねと物語が思わるのかと思いきや、さらにもう一つのドラマが待っていて、うむ、やはりこの作家は一筋縄ではいかないなと思わされた。


同じ星を見ることとは同じ希望を抱くことではないのか、などとおセンチな感想を持ったりもするが、まぁとにかく天体に熱中する中高生が愛おしい青春小説である。