本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

永遠の曠野 芙蓉千里3/須賀しのぶ

革命軍、白軍、胡子(馬賊)、コサックなど、様々な武装勢力が複雑怪奇な争いを繰り広げる戦前のソ満国境を舞台に、舞踊の名手であった芸者芙美の波乱の青春を描いたガールズ大河小説最終巻。

危ういところを山村健一郎に助けられた芙美は、山村こと楊健明の率いる胡子(ふうず=馬賊)の一味に加わり、徐々に荒事にも手を出していく。芙美に冷たく当たる狷介なナンバー2呉炎林は実は健明に惚れており、それが二人の確執の元でもあるが、公平な男でもあり、芙美の実力を認めていくのだった。

子供の頃の芙美を救い、芙美を虜にした山村(日中の混血で、馬賊を率いる)は、当初、ニヒルな無頼漢として描かれていたが、トラブルにはまり込むほど軽薄に陽気になるという側面もあり、何やらルパン三世のイメージと重なる。そして、気まぐれで芙美を助けた健明にとっても芙美はかけがえのない相手になっていくのだった。

どちらも熱血的な男と女であり、血の雨の降る荒っぽい稼業もこの二人に花を添えているように見える。言わば西部劇のパターンだろうか。最終場面はまだ戦前の満州で、終戦までをたどれば更に波乱万丈になりそうだが、まぁこのあたりで終わるのがちょうどいいのだろう。恋に駆け抜けた芙美が痛快だ。